最近、学ぶということができていない人がいることに気が付いた。研究者だけでなく人はだれでも、人や本から学ぶということのスキルが不可欠である。千利休の言葉、「守破離」が示すように、学ぶことの最初のステップは「まねる」ということである。このとき、学ぶ相手に対して何らかの反発心などがあると、まねることができないので注意が必要である。学習の前提は理性であって感情に支配されては学ぶことができなくなる。

学ぶ第一歩としての「まねる」というステップでは、学ぶ相手に対する感情は一切外して、理性だけで判断してまねる、ことが大切である。学ぶものは知識だけではなく人のふるまい、行動の仕方、考え方など様々である。知識以外の要素については特に感情が伴いやすいので、注意が肝要である。人間誰でも完璧ではない。人格面でも欠点のない人はいないと思う。それでも感情を排除すればどのような人からでも学ぶことができる。先人から学ぶというのは研究者として、また人としての必須事項である。

「守破離」は元来茶道から来た言葉であるが、学習のステップとしてあらゆる場面に当てはまる。そのステップとは、まずまねる(守)、次に自分なりの工夫を行う(破)、最後は自分流の道を究める(離)、である。この中には他人を感情的に批判するという態度はない。自分なりの工夫を行う過程では、これまでの先人のやり方の問題点を認識することは必要であるが、それ以上に大切なことは、より高いところを目指すことができるという自分なりの着眼点である。学問の発達はこのような研究者の態度のたまものである。

人も書籍に書いてあることも完璧ということはないが、自分に持っていない何かをそこからつかみ取り、「まねる」という態度が必要である。